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《復刻版》ワインの酸化防止剤 [Vino e …?]

§ これも昨年末、誤った操作で削除してしまった記事の一つです。 
 下書きはすぐに見つかったのですが、そのまま復活させるべきか躊躇していました。文章が硬く断定的で、見方によっては挑戦的でもあること。それ以前に伝聞・推量の部分も多く、もっときちんと調べてから…と思う気持ちもまだあるのです。
 しかし記事をのせた直後から反響も多くて皆さんが関心をお持ちのテーマだという事も分かりました。フランスワインに詳しい方からは次のようなメールも頂きました。
「空輸便では問題ないのですが『赤道を越してくるコンテナ便には新たに防止剤を注射しているのが問題』と思っていたので『どうなんだろう』と思いました。イタリアワインはあまり見ていないので分かりませんが。日本で高いワインを買う場合は問題ない(航空便なので)のですが、コンテナ便には新たに注射針状の太さで3〜4カ所開けてあり、さらに注入しているのが味を落とす、というか無駄な酸化防止剤を使わざるえないのが実態だと……」
 キャップシールの注射器で開けたような小さな穴が「後から追加した酸化防止剤の痕跡」という認識も根強いようです。私はこれも誤解では?と思っているのですが、あの小さな穴について真相をご存知の方はお知らせください。
 というわけで確認作業はまだまだ不充分ですが、たたき台のつもりで再掲載いたします。「ワインを楽しむためには酸化防止剤をどう考えたら良いのか」という議論が深まれば嬉しいです。皆さんのご意見などお寄せ頂けましたら幸いです。
 なおこの記事は昨年12月上旬、ewomanというサイト
http://www.ewoman.co.jp/で、メイコが「イタリアワインを楽しんでいますか?」というテーマのサーベイキャスターを務めていた時、寄せられた投稿に応えた文章が元になっています。

 ワインの酸化防止剤が気になっている人も多いのではと思います。ワインの酸化防止剤にまつわる都市伝説もたくさん流布しています。「ボルドーは酸化防止剤を使っているので品質が安定しているが、ブルゴーニュは使っていないので当たり外れが大きい」「同じ銘柄のワインでも、イタリア本国で飲むより日本で飲む方が味が落ちるのは酸化防止剤のせい」「ワインを飲んで頭痛がする原因は酸化防止剤」……。これらの前提に「酸化防止剤を添加するのは日本に輸出するため」という誤解があります。

 しかし、現実にはオーガニック(有機農法)ワインも含め、フランス、イタリアを始め、世界中のほとんど100%のワインは、製造過程で酸化防止剤=亜硫酸塩を添加しています。けっして日本への輸出のためではありません。必要不可欠な製造過程だからです。
 現地のワインのラベルに酸化防止剤添加の表記がない場合が多いのも、添加していないのではなく表記する義務、習慣がないからです。逆にフランスのワイン法ではすべてのワインに亜硫酸塩添加が義務づけられているそうです。

 酸化防止剤=亜硫酸塩を用いたワイン製造技術は数百年前に確立します。この技術によってワインを熟成させることが可能になったのです。もし亜硫酸塩が添加されなければコルク栓を抜かなくても瓶の中で酸化が進行してしまう訳で、偉大な熟成タイプのワインは存在できない事になります。

 では、気になる亜硫酸塩とはどんなものかというと、硫黄を燃やして造る殺菌力のあるガスのことで、古くは古代ローマ時代にも有効な殺菌法として使われていました。実際の製造過程ではブドウを搾汁する段階で添加し、果汁の酸化と雑菌の繁殖を防ぎます。亜硫酸塩には果皮からポリフェノールを溶け出しやすくする効果もあります。瓶詰めのときにも添加して瓶の中での酸化を防ぎます。

 それでは実際に市販されている酸化防止剤無添加ワインとは、どのようなものなのでしょう。現時点では酸化防止剤抜きで熟成タイプのワインを造る技術はありませんから、それらのワインは「若飲み」を前提にしたものです。
 酸化による不快な匂いを隠すため、香りのきつい生食用のコンコード種などを使った甘口ワインが多かったのですが、最近はよりワインらしい風味を大切にした酸化防止剤無添加ワインも開発されているようです。亜硫酸塩がどうしても気になるという方は、試されると良いかもしれません。メルシャンのサイトで無添加ワインの開発について語られています。
メルシャン/おいしい酸化防止剤無添加ワイン
 http://www.mercian.co.jp/mutenka

 冒頭の都市伝説はどこから生まれたのでしょう。同じ銘柄のワインが本国で飲む場合よりも味が落ちるとしたら酸化防止剤の問題ではなく、輸送と管理に問題がある場合が多いのではないでしょうか。ヨーロッパから船積みされるワインは必ず赤道付近を通過します。そのときの温度管理が問題になります。「リーファーコンテナを使用」と明記されたワインならその点は安心です。
 販売店の品質管理の問題もあります。ある年の暮れに訪れた某有名デパートのワインコーナーは過剰な暖房と人いきれで、30℃近いのでは? という環境、並んでいた高価なワインが哀れでした。


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cuvee-juliez

はじめまして。
とても興味深く、また大変タイムリーな内容で、いっきに読ませていただきました。
またお邪魔します♪
by cuvee-juliez (2006-01-18 23:18) 

YOOKAI 絵画部屋

こんにちは福井洋一さん、最近は事があるので、久しぶりブロクに来ない、君のコメントを見ることがない、ごめんなさい、これは君の新しいブロクですが、いいね、私は暇な時にここへ遊びに来ます、君は料理研究家、すこいですね、今はイタリアに住んでいますか、「羨慕」、これからもよろしくお願いします、ありがとう。
by YOOKAI 絵画部屋 (2006-01-21 10:26) 

plot

こんにちはYOOKAIさん、お元気ですか?so-netのblogにも来てくれてありがとう!
福井洋一が画家で、メイコ イワモトが料理研究家です。
YOOKAIさんの記事を読むと日本語がとても上達したのがわかります。
時々、YOOKAIさんのblogも訪問します。絵画作品も期待しています。頑張ってくださいね。
by plot (2006-01-21 15:05) 

とても興味深く読ませていただきました。
酸化防止剤や輸送方法の問題について、以前も何かで
読んだことがあるのですが、それ以来、無造作に
店頭に陳列されているワインを買うのをやめました。
今では↓のワインばかりをいただいています。
http://www.mavie.co.jp/
by (2006-01-22 16:03) 

plot

toucoさん、コメント&nice!それに貴重な情報=オーガニックワイン専門店マヴィさんのサイト http://www.mavie.co.jp/ ご紹介頂いてありがとう!
サイトの中で紹介されているオーガニックワインの製法「保存料として、伝統的な方法で硫黄を燃やして作ったごく少量の二酸化硫黄ガスを吹き込んでいます」は、まさにここで書いた伝統的な《酸化防止剤》のことですが、オーガニックでないワインの中には「保存料として、メタ重亜硫酸カリをワイン液中で化学反応させて合成した亜硫酸塩やソルビン酸を使用」しているものもあるというのは貴重な情報です。追跡したいですね。
by plot (2006-01-22 17:45) 

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