不在の晩餐(仮題) その1 [アトリエから]
新しい絵を始めました。
制作の過程をご紹介していきます。
でもその前に、前々回の記事、ブレブレの写真だったオーストリア版ナマハゲ。
今度はもう少し鮮明な写真です。
(友人撮影)
[アトリエから]はだいぶん久しぶり。
つまり久々に新しい絵にとりかかったというわけです。
年明けからフィレンツェにある「最後の晩餐」をいくつか観ているあいだに、自分も「最後の晩餐のようなもの」を描きたくなりました。
妙に感じられるかも知れませんが、フィレンツェという特別な場所にいると「何かを描きたくなる」というのはとっても稀な心の動きなんです。ウフィッツィ美術館を始めフィレンツェの街には、人類史上最高というべき名画が、一年では観きれないほどたくさん存在しています。我が家のドアの外には、どんな画家も描けいほど美しい風景が広がっています。充分すぎる美しい環境に取り囲まれていると「これ以上、何を付け加えたら良いのか」というのが自然な心の状態です。「何かを描きたい」なんて気持ちは超貴重。というわけで「身の程知らず」とかあえて考えず、素直に「最後の晩餐のようなもの」を描くことにしました。
でも、何を描けば良い?
2000年あまり前のエルサレムの出来事を再現する意図はありません。
ルネサンスに多く描かれた「最後の晩餐」にしても、登場人物たちは当然のようにその壁画が描かれた時代、つまり1400年代、1500年代の衣装、風俗で描かれています。
時代考証なんて考えはそもそも存在しなかったのかも知れません。
1950年代のハリウッド製の古代ローマやエジプトを舞台にした映画で、女優たちが1950年代アメリカ風のメイクアップで登場するのとも似ています。
僕も登場人物たちは現代に生きる人に置き換えようと思います。
だとすると現代の「最後の晩餐」の人物たちにはどんな表情をあたえたら良いのでしょう?
手許の画集の一枚の絵に惹きつけられました。
トーマス・ゲインズボロ「ザ・ブルー・ボーイ」
Thomas Gainsborough(1727 - 1788)
The Blue Boy. 1770
Oil on canvas. Henry E. Huntington Art Gallery, USA.
静かな表情。
期待、親しみ、憧れ、信念、諦め、悲しみ、苛立ち、怖れ、哀れみ、孤独、不信、裏切り…。
どんな感情が含まれるにせよ、それらはあくまで密かなさざ波のように控えめに表現されています。
さっそくラフに模写してみます。
h:11.5cm ボールペン 1/7
あまり似ていないけど、目的は表情の秘密を探る事なので…。
とりあえず「静かな表情」を目差して描き始めることにします。
木炭で描き始め。1/07
サイズ:200cm×115cm
ゲインズボロを忘れ、模写したデッサンも見ないで描き始めます。
つまりここからが自分の絵というわけ。頭の大きさを小さく修正していくうちに、ちょっとこっけいな表情になりました。でも気に入ったのでそれでいく事にします。
テンペラで着彩。1/08
下塗りの施されていない生成りの厚手の綿布に直接、テンペラで描いていきます。
同上、少年の部分のアップ。1/08
また表情、少し変りました。
とりあえずここまでにして、その他の登場人物をデッサンします。
「最後の晩餐」はイエス+12使徒=13人。
僕の絵にはイエスを除く12人を描く事にします。
イエスの不在というシチュエーションです。
残りの12人。12使徒なら全員男性ですが、こだわらず女性も描く事にします。
人物デッサン ボールペン いずれも 1/10
少年の周囲にデッサンした人物を木炭で線描。1/14
登場人物がまだ不足なので追加デッサン。
ボールペン 1/14
人物を追加して着彩を始めます。1/15
こんな具合に完成までときどき経過をお伝えしていく予定です。
前回、前々回の記事にも暖かいコメント、たくさんいただき、ありがとうございます。
お返事、例によって遅くなってます。お許しください。
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うるっ・・・
ちょっと感動・・・
こうして デッサンから絵が描き始められる工程を見れるなんて
貴重な体験です。
どんな作品に仕上がるのか?
楽しみにしてます。これからも途中経過を教えてくださいねヾ(*^。^*)ノ
by Coo (2007-01-18 10:14)
デッサンがいいですね。
工程がみれるので楽しませてください。
by (2007-01-18 12:33)
さすがですね~!完成が楽しみです♪
by Nicoli♪ (2007-01-18 16:16)
モデルのいない女性のデッサンでは奥様に顔が似てくるようなことはありませんか?
プロならそういうことはないんでしょうか?
by つぐみ (2007-01-18 17:31)
こんなのを見せられると、またまた、「絵の描ける人って、いいなぁ」 と羨ましくなっちゃいます
by toraneko-tora (2007-01-18 17:33)
こうして絵が描かれていくのですね。・・感動です。
オーストリア版ナマハゲ。迫力ありますね。
by (2007-01-18 18:27)
オーストリア版ナマハゲ・・・恐っ。
デッサンの工程は、どのように進んでいくのか、楽しみです。
遅れてしまいましたが「ワイン王国」読みました。
キャンティの素敵なワインに出会えたそうですね。
羨ましい限りです♪
by (2007-01-18 21:09)
不在の晩餐……楽しみです!
「使途」一人ひとりの表情に、その人のドラマを想像せずにいられません。
さらにそれぞれのドラマが絡み合い……無限に広がりますね。
by monad (2007-01-18 22:08)
フィレンツェは絵を描く刺激になる場所でなく、最高のものが揃っていて
描く気にならない所。なるほど~~そうなんですかぁと感心してしまいました。
でも洋一さん、描き始めたのですね。4月に向けて。「BlueBoy」 カリフォルニアのハンティントン美術館にある作品なんですね。ゲッティ美術館と
ハンティントンは行きたい場所。
毎日、少しずつ出来ていきますね。こうやって順に見せていただけるの、
楽しいです。
by TaekoLovesParis (2007-01-18 23:33)
絵が描かれていく制作過程を見ることができるなんて嬉しいです。
なんだかわくわくしますね。
by kom (2007-01-18 23:55)
デッサンから出来上がっていく姿、とてもわくわくします。譜読みからコンサートまでの練習の道のりに、似ているところがあるなあと思いました。徐々に見えてくる、作品の奥深さを発見する旅、芸術って人生ですね!
by norikopianist (2007-01-19 00:42)
念のはいった製作過程の紹介。興味深々です。
どんな作品が出来上がるのか楽しみです。
by yoku (2007-01-19 05:57)
新最後の晩餐・・・どのような背景の一瞬なんでしょう。
中央の女性。。。「この中に私の赤ちゃんの父親がいる・・・」なんて告白?でしょうか。。すいません。
by (2007-01-19 06:59)
ゲインズボロの少年より、
静かだけど、ちょっとちゃめっけのある少年って表情になって来ましたね!
これから、12人の人間がどのようなかかわりを持ってここにいるのか、
想像するととても面白いです。
行程を見られるのも、すごく珍しい経験ですし、出来上がりも楽しみです^^
by (2007-01-19 10:25)
こんにちは~
>充分すぎる美しい環境に取り囲まれていると「これ以上、何を付け加えた>ら良いのか」というのが自然な心の状態です
なるほどでした。plotさんがおっしゃるとまた説得力があります。
でも、描き始められた新しい絵。
plotさんの世界の最後の晩餐・・・これからどんどんどんな想いが込められていくのかも興味が湧いてきます。また過程を色々拝見できるなんて!とっても楽しみです。
by シェリー (2007-01-19 12:40)
plotさん 今晩は
「最後の晩餐」ですか?
楽しみにまた勉強させてもらいます。
by 匁 (2007-01-19 20:51)
う、う、うめ~~~!!!!!(≧▽≦)ノ
マジ感動です~~~♪♪(T▽T)
いろんな表情が、いろんな人種がおもしろい!!
昔木炭デッサン習ってました。
木炭デッサン好き~♪
続きが楽しみです!!
by ツカ (2007-01-20 02:36)
何かを描きたいって気持ちと、何かを描かなきゃって気持ちは
似てるようだけど違いますね。少しうらやましいです。
何となく“十二人の怒れる男”を思いおこしてしまいました。
by あーろん (2007-01-20 06:24)
「不在」をストーリー付けるのが難しそうだなぁ~。
これらの登場人物たちで、どんな洋一さん流“最後の晩餐”に仕上がって行くのかめちゃくちゃ楽しみです。
これ、もしかしたら今年の写実画壇展用ですか?。
だったら、上野で実物に会える??。
by yk2 (2007-01-20 10:14)
最初の左側の写真に釘付けになりましたがw
すばらしいデッサンをみて 感嘆しかありません~ 、、
いろんな人種、性別もあっての使徒たち、 とっても楽しみです。・。・
by chi-ran (2007-01-20 16:07)
十二人の使徒ですね。
女性も含めた自由な使徒の発想、面白いです。
出来上がりがとても楽しみです。
by 柴犬陸 (2007-01-20 16:48)
ナマハゲは、やはり日本のそれとはちがいますね。
なんだか、やっぱり洋風?
あーろんさんのサタンさんを思い出しました…。
絵って、こんな風に描かれていくのですね。
素人なので、過程をみせていただけて、とても感激です。
楽しみにしています。
by (2007-01-20 18:06)
1つの作品の生まれる過程を見学できるなんて
ちょっとない体験です! 今後のストーリー、発展が楽しみ♪
by ぱふ (2007-01-20 23:27)
デッサンの段階から・・・いや、こんなに絵画に惹きつけられたのは初めてです。ありがとうございます。
by 鈴木浩司 (2007-01-21 03:12)
皆さんのコメントに同感。素晴らしい。
by zep (2007-01-21 06:38)
現代人で綴る最後の晩餐、実に面白い発想ですね。
女性を交えたり、髪型、衣装も現代風で・・・完成が楽しみです。
旅爺さんの部屋の拙いブログを沢山見て頂きまして有難うございました。
by お散歩爺 (2007-01-21 07:19)
これから出来上がる絵の過程を案〜デッサン...順を追って
見させていただき、感動........今後も楽しみにしています!
ナマハゲ楽しそうですね(^^)
私は、獅子舞に頭をパクリとやってもらいました♪
by ぴい (2007-01-21 09:55)
最後の晩餐、何年かけられるのか存じ上げませんが、完成したら、日本からでも見に行きますね!
そのころにはチビが絵を分かるようになっていればいいんですが。。
by (2007-01-22 02:23)
仏様を彫る方は、よく、
「中に仏様がいやっしゃるから出して出してさしあげるんだ」という意味の
お話をしますが、絵もまさにそんな感じがしました。
浮き上がってくる人物の表情に魅せられましたよ!
なんか、輝きのある表情で、スバラシイです~!!
by nicolas (2007-01-22 22:54)
正直、この過程に感動しています。
絵を描く裏側には遭遇したこと、なかったですから。
皆さん同様、惹きつけられます。
そして、この更新を楽しみにしています!
by (2007-01-23 13:28)
うーん こんな描き方もあるんですね とても興味深いです
正面を見据えている 中央の女性と少年の関係が
なんだか 気になるところですが……
人間の顔って 正面から見ると 左右かなり違うんだな
とつくづく思いました
完成 楽しみにしています☆
by (2007-01-23 23:34)
皆さん、素敵なコメント、たくさんありがとうございます。
この絵、yk2さんが書いてるとおり上野の森美術館で4月始め開催予定の写実画壇展に間に合わせるつもりです。
もし早く出来上がったらその前にフィレンツェのどこかでも発表したいのだけど、具体的な目処があるわけじゃありません。
いやそもそも完成するかどうかも定かじゃないですけど。
今、フィレンツェ時間25日マイナス45分の時点では、人物の姿勢やテーブルの高さ、部屋の設定などで四苦八苦しています。今週末には途中経過をupするつもりです。
また、コメントしますね。
by plot (2007-01-25 07:21)
書の作品制作との違いと ある面で似ているところに非常に興味深く見させていただきました また大変勉強になりました 続きを楽しみにいたしております
by さねさし (2007-01-29 19:38)