カルパッチョ再訪&展覧会のご案内 [フレスコ画の世界]
カルパッチョといっても料理の名前ではありません。
500年後に誕生した料理にその名を捧げられた画家、
ヴィットーレ・カルパッチョのお話です※。
Vittore CARPACCIO(1455/1456/1472 - 1525/1526※※)
※※生没年には諸説あり
こじんまりしたスクオーラ・ディ・サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニ。
※ 料理のカルパッチョとその名の由来については、以下の記事をご覧ください。
ヴェネツィアのリストランテーその1
「スクオーラ」というのは、同信会(同信会館)と訳される事もあるヴェネツィア独特の建物=制度です。
同郷の信徒集団の教会と集会場、相互救済院の機能を合わせ持つ信徒組織=慈善団体です。
「スキアヴォーニ」は、ヴェネツィアの属領だったダルマティア(現在のクロアチアにあたる)人のこと。
「サン・ジョルジョ」は、ダルマティア人の守護聖人、聖ゲオルギウス(=セント・ジョージ)です。
カルパッチョの代表作はアカデミア美術館の「聖女ウルスラ伝」連作が有名ですが、それに勝るとも劣らない作品群が、サン・マルコ広場から少し離れたスクオーラ・ディ・サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニにあります。
12年前に初めて訪れて以来の訪問です。
その間、何度もヴェネツィアには来ているのですが、毎回、初見の場所を優先してしまうので再訪が遅れてしまいました。
今回、改めて感動。
もっと早く来れば良かったと後悔しています。
1501-2年に発注され、1504-7年にかけて制作。
1551年に同じ建物の2階から1階に移された以外、カルパッチョが描いた時代から現在まで、ずっと同じ場所に置かれています。
キャンバスに描かれていますが、建物と一体となった壁画とも言えます。
その意味では、本来意図された場所から移動され、標本のように展示されている美術館の収蔵作品よりも、画家の制作意図、息遣いが直接、感じられるように思えます。訪れる人も少なく、ゆっくり鑑賞出来るのも嬉しいです。
前置きはこのくらいにして…
聖ゲオルギウスと竜
San Giorgio e il drago
1504-07 tela, 141x360cm
凄惨なシーンの筈ですが、静的なリリシズムが支配する精緻な世界。
ゲオルギウスが騎乗する馬の繊細で端正なプロフィール、それに対峙するドラゴンは精かんでエキゾチックなデザイン。
まるでピニンファリーナ・デザインのフェラーリvsベルトーネ=ガンディーニのランボルギーニといった趣です。
カルパッチョが20世紀に生まれていたらカーデザイナーになっていたかも知れない…なんて想像しながら眺めていました。
「フレスコ画の世界」のカテゴリーに入れていますが、技法はフレスコ画ではなくキャンバスにテンペラ技法で描かれています。
聖ゲオルギウスの勝利
Trionfo di San Giorgio
1504-07 tela, 141x360cm
こちらは一転して賑やかなシーン…ですが、華麗でデリケートな細部描写とシンメトリカルな構図が、不思議な静けさを生んでいます。
シレナ住民の洗礼
San Giorgio batezza i seleniti
1507 tela, 141x285cm
カルパッチョの造形の特徴は、繰り返される形態が生み出す音楽的なリズム。
この画面では、太鼓、ラッパ、ターバン、クーポラ(半球形屋根)などの円・球形が繰り返されて祝祭的なリズムを奏でています。
聖アウグスティヌスの幻視
Visione di Sant'Agosutino
1502-04 tela, 141x211cm
あくまで静かでありながら、同時にドラマティックな瞬間。床に延びる影も効果的です。
聖ヒエロニムスとライオン
San Gerolamo conduce e il leone
1502 tela, 141x211cm
逃げ惑う修道士達の衣類の襞、何と流体力学(エアロダイナミズム)的であることか!
聖ヒエロニムスの葬儀
Esequie di San Gerolamo
1502 tela, 141x211cm
修道士達の頭部、繰り返される球形が生み出す何やら陽気なリズム。不謹慎な見方ではありますが。
スクオーラ・ディ・サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニ
Scuola di San Giorgio degli Schiavoni
3259/a, Calle dei Furlani , Castello - Venezia
見学は9:15-13:00/14:45-18:00
日曜・祝日9:15-13:00(午前のみ)
月・火曜休み
休館日、見学時間とも季節により変更の可能性あり、要確認。
tel.+39.041.5228828
入場料:3€
ところで、あいかわらず記事の更新など滞り気味です。
実は現在一時帰国中、例によって殺人的スケジュールです。
少し落ち着きましたら、頂いているコメントへのお返事、皆さまのブログへの訪問など再開いたしますので、ご容赦くださいませ。
ここからは展覧会のお知らせです。
銀座ギャラリー・ニケ「クァルティーノの会」(4人展)
カルパッチョの絵はplot さんも描きたくなるような絵じゃないですか。
銀座での出品作品はイタリアで発掘された絵を連想するような色使いですね。素晴らしいですね。
by 旅爺さん (2008-03-23 14:25)
plotさんの作品展伺います♪
不謹慎にも聖アウグスティヌスの傍らの猫ちゃんや、「なるほど、ドラゴンは馬より小さいのね」とヘンなところに興味をもってしまいましたが、カルパッチョの作品は魅力に溢れていますね。
実物は迫力がありそう。。。
隅々まで見てみたい誘惑にかられます。
機会があれば行ってみたいです。
by てんとうむし (2008-03-23 23:04)
カルパッチョ氏の絵、シャープな感じがしますね!
なんかラインが綺麗♪
フェラーリvsランボの解釈、面白いです(笑)
あ~、ホントにカルパッチョ氏のカーデザインを
観てみたかったなぁ~!(≧▽≦)
クァルティーノの会、デジイチ片手に銀ブラしながら
観に行きたいと思います♪^^
by ツカ (2008-03-24 01:55)
円いカーブや直線・・・
定規を使ったわけでもなさそうなのに、
どうやったらこんなにキレイに描けるのかしら・・・。
by Inatimy (2008-03-24 07:51)
僕が1番好きなサッカーのリズムはアルゼンチンのムルガ(Murga)。
1900年代初頭に350万人のイタリア、スペインなどの移民が本格的に
持ち込んだリズムが発展していって今の形になったらしいのです。
そのアルゼンチンにスペイン人が上陸する30年前に描かれた
カルパッチョさんの画に描かれている太鼓やラッパに
僕の大好きなリズムのルーツを勝手に想像したりしたりしています(^^)
どこのお店で頂くカルパッチョも『マドンナの頬の、美しい淡いばら色』には
中々出逢えないのですが・・・ 個展、出来る限り行きたいと思っています。
by 鈴木浩司 (2008-03-25 02:12)
眺めれば眺めるほど、なんか不思議な世界に迷い込んでしまいました^^
何でなんだろう・・・ 両方ともラッパ吹いているのに・・・
by 鈴木浩司 (2008-03-26 01:32)
今まさに最中なのですね。一度実物を拝見してみたいのですがなかなか。
カルパッチョって カルパッチョさんの展示会のために考案されたなんて お料理もルーツを探ると色々裏があって面白いです。カルパッチョさんの絵も実物大で見てみたい~☆
by mompeli (2008-03-31 09:27)