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ロケット小僧 [フレスコ画の世界]

田舎暮らしの話題が続きました。都会の友人は「ボケるぞ」と脅します。あたってなくもないかも。「なぜ私は、ワイングラス片手に猫抱いて日向ぼっこしてるんだろ?」と疑問がかすめる一瞬もあります。(あ!そこの人、石なんか投げないように)

というわけで、フレスコ画の本場に働き場所を求めてやってきた壁画家の存在証明として(そんなに大げさなものではないですが)、専門分野のお話を始める事にします。技法的な話題も含め、イタリアで出会ったフレスコ画をご紹介する予定です。


ジョット  哀悼の場面
スクロヴェーニ礼拝堂壁画の部分、パドヴァ1305頃
Giotto di Bondone
Compianto, particolare; Cappella degli Scrovegni, Padova

第1回はジョットのロケット小僧。

左上の少年はイキんでいる様子、お尻にプカプカ浮んでいる物体、某ビール会社本社ビル屋上で見たような?
その右は背筋を鍛えているのでしょうか?
いちばん真面目に飛行に専念しているのは右下の少年です。手の平の向きで飛行姿勢を制御。げいこま。
その左、かつらを気にしているのかな?

・・・・なわけはなく、イエスの死を哀悼する天子達の場面です。
それぞれの天子の悲しみの表情と姿勢を個性的に描きわけ、深い悲しみを説得力豊かに表現した傑作です。

パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂の内部は、清冽な青が魅力的なフレスコ画で覆われています。
ただし、この青の顔料は石灰のアルカリによる変色をおそれ、漆喰が湿っている間に描く「フレスコ技法」ではなく、壁が乾いてから描く「アセッコ技法」で着色されています。
ジョットはルネサンスに先駆ける画家。
彫刻的な量感と確かな描線、優れた観察と性格描写が創りだす、圧倒的なリアリティと存在感は、後のマザッチョを予感させます。
フレスコ技法的には、1日の描画分ずつ漆喰を塗りつぐ「ジョルナータ技法」を確立した点も重要。

ご存知の通りフレスコ画の多くは宗教画です(例外も少なくないのですが)。
キリスト教徒でないからと始めからひいてしまう方も多いと思います。
僕自身、無神論者です。ただ近年はカトリックにシンパシーも感じています。国民の90パーセント以上がカトリック教徒である国に暮していれば当然かも知れませんが。
このコーナーではキリスト教徒でなくとも楽しめるフレスコ画の気軽な(不謹慎かも知れない)楽しみ方をご紹介していきたいと思います。

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あーろん

正直なところフレスコ画ってなんなんだろう?って
思ってたりしたのでこの記事はとても勉強になります。
とりあえず、フレスコ技法だけはしっかり覚えました
後の技法はたぶんすぐ名前を忘れるかも‥‥f(^^;)
(技法の区別だけは忘れないと思うんですが)
しかし‥‥いきんでる天使の羽がつながってるのが
かなり気になります
by あーろん (2006-05-21 01:38) 

plot

確かにつながってますね。
羽ばたけないから、やはりロケット推進か?
あるいはブーメランのように回転しながら飛んでくのか?!
by plot (2006-05-21 02:19) 

匁

福井洋一さん
こんにちは
待ってました!!飛ぶ鳥(人間)を描く時の参考になりますね!!
次回からも楽しみにしています。
by (2006-05-21 10:50) 

そうなんですよね。あまり込み入った宗教の話がバックグランドにあると十分な解説なしではピンとこなかったりして残念なときがあります。楽しみにしています。
by (2006-05-21 15:06) 

スクロヴェーニには行ったことがあります。
鮮やかな青が印象的でした。
私が行った2002年当時は礼拝堂内部は撮影禁止だったので
写真集を購入しましたが、今はOKなんですね。
1商人が自宅の庭にこれだけの礼拝堂を建てたのですから、
さぞかし裕福だったのでしょう。
by (2006-05-21 17:27) 

いっぷく

楽しみな企画がスタートです。
生徒のような気持ちで読んでいます。
by いっぷく (2006-05-21 19:35) 

plot

tigerkitaさん、panda_pandaさん、Ikesanさん、manzoさん、いっぷくさん、
ご訪問、nice!、コメントありがとうございました。

tigerkitaさん、
始めはすこし変な、弘法も筆の誤り的なものを優先的にご紹介して見ようと思っていますので、ご参考になるか自信がありませんが楽しく見て頂ければ嬉しいです。

Ikesanさん、
宗教の話は込み入ってこないと面白くないとも言えますね。「ダヴィンチ・コード」もかなり込み入ったお話ですし。

manzoさん、
ほんとうにイタリアのかつてのお金持ちは桁が違いますね。
撮影の件ですが今はOKなのかどうか僕も分かりません。というのはこの画像は友人の出版社の持ち物で自分で撮影したものではないからです。ただ最近、イタリアでも「撮影禁止]の表示から「フラッシュ禁止」に変わった場所も増えました。デジタルビデオの普及の影響なのかも知れません。
この場面のもっと大きな画像は
Mark Harden's Artchive: "Artchive"
http://artchive.com/ftp_site.htm
でも見る事ができます。
左端、アルファベット順メニューから
GIOTTO⇒VIEW IMAGE LIST⇒The Mourning of Christと選んでサムネールをクリックするとかなり大きな画像が見れます。解像度は充分なのですが色合いはかなり変です。Photshopで自動レベル補正した位が、実際の印象に近い感じです。

いっぷくさん、
あまり気張らず息長くやっていくつもりです。のんびりおつき合い頂けると嬉しいです。
by plot (2006-05-21 20:48) 

ご親切に教えていただいてありがとうございました。
早速確認してみましたけど、本当に色がヘンですね。
もっと鮮やかな明るい色だったのに。
スクロヴェーニの公式サイトのギャラリーの方がまだ
キレイに撮れていると思います。
by (2006-05-21 21:12) 

えいっ!石投げちゃえ(笑)
ワインと猫と日向ぼっこって優雅ですね♪
素敵な絵の紹介楽しみにしています(^^)
by (2006-05-21 22:13) 

はじめまして。
先日ご訪問いただき、ナイスありがとうございます。
フレスコ画がきれいです。文章を読んでいるとそうなのかなと思いました(爆笑)
今後はよろしくお願いします。
by (2006-05-21 23:10) 

yoku

ジョットといえば、アッシジのサン・フラチェスコ寺院の
「小鳥への説教」があまりにも有名ですが(観ました)
この画もすばらしいですね。やはり専門家がとりあげる
とあってゾクゾクします。
by yoku (2006-05-22 06:58) 

700年前のものとは思えないほど
鮮やかできれいな青ですね。
「アセッコ技法」という方法で着色したから
こんなに綺麗なんですね。
実物はもっと、もっと素晴らしいんでしょうね。
ぜひ、近くで観てみたいものです^^
by (2006-05-22 19:37) 

TaekoLovesParis

はじめまして。
私のブログにご訪問いただきありがとうございます。
plotさんとは、行く先々でお目にかかっておりますので、時々ブログを読ませて
いただいていました。でも大作ぞろいだから読み始めると時間がかかって、、、
。今のこの忙しさが終ったら、ちゃんとご挨拶してと思っておりました。でも
先に訪問されちゃった(笑)
車と食べ物と絵に興味があるので、ついついどっぷり浸ってしまいます。
特にフィレンツェの旧車の時は、憧れだったスパイダーにトッポリーノ。それも
次から次へと写真がでてきて、もぉう、うっとり♪でした。
これからは大手をふって伺います。
by TaekoLovesParis (2006-05-24 02:06) 

tonpoo

フレスコ画にはまるでウトイんですが、
いかにもイタリア~なニオイがしていいですよね(意味不明?)
フィレンツェで泊まった「Grand Hotel Villa Cora 」の部屋は
天井にフレスコ画が描いてあって素晴らしい部屋だったんですが
発熱して独りで部屋で寝てたら、なんとな~く怖かったです^^;
夜で、物音ひとつしなくて・・・目を開けると天井の天使と目が合う。
ふる~い洋館、大きな鏡、薄暗い部屋、どれをとってもホラー映画
さながらのシチュエーション・・・ですよね(笑)
by tonpoo (2006-05-24 22:55) 

plot

Villa Cora、良いホテルですねっていきなりでごめんなさい。
このところすっかりお返事のタイミングがずれてしまってます。
みなさん、失礼、お許しください。えーと「アセッコ技法」その他、いろいろお答えもしたいのですが、そんなわけで新しい記事のほうに書いていこうかなと思ってます。
記事更新する前にお返事書くのが正しい段取りですね。反省。
by plot (2006-05-29 21:21) 

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