SSブログ

La Tonda  円い絵 その2 [アトリエから]


テンペラ着彩4日目

あまり変わり映えしませんが…

ありえない光と陰影の状態(太陽が一つだとすると)に気がついて修正を始めたところ。
太陽が中心よりやや右上にあるとすると、7時の位置にある建物は正面から光を受け、12時の建物が逆光ということになります。太陽はこの建物の向こう側に隠れているのかも知れません。

…というようなことは所詮絵空事ですから、拘らなくても良いわけですが…。

この街が実在するとして、その広場の真中で、空に向けて魚眼レンズで撮影したら、空はもっと大きく、建物は小さく、空は太ったヒトデのように写るでしょう。
空の形がこんな星形に切り取られるためには、摩天楼のように高い建物が必要です。
そこですでに一つ、嘘をついているのです。

もっとも魚眼レンズが正しい像を写すとは限りません。
魚眼レンズの映像は、直線の建物の輪郭を曲線に歪めてしまいます。
一方、人間の目には直線は直線として映ります。だいたい人間はそんなに大きな視角をもっていませんから、断片的な視野像を頭脳で合成して視覚像を得ている訳です。
だから嘘のほうが真実に近い場合もあるのです。
というわけで絵空事にもそれなりのリアリティが欲しいのです。その世界にふっと迷い込んでもらうために。

…と、描き始めたばかりですがここでいったん中断。
日本からの急ぎの仕事を済ませてから、10日間ほど帰国します。

☟これも僕の仕事です。
http://www.lecringinza.co.jp/
アニメーションのように一筆書きで描いた訳ではありませんが。

…実は、ここまではフィレンツェで出発前に書いた下書き。

本当はもう日本に帰っています。この絵は置いてきてしまったので帰るまでお休み。
レオナルドがモナリザを持ち歩いたように、持ってくれば良かったとちょっと反省。

以下は前回の記事
http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-07-16-1
にお寄せ頂いたコメントへのお返事です。

nekoさん、
コメントありがとうございました。nekoさんのblogの猫達にいつも癒されています。
<なぜか猫が飛んでいる>
僕も猫が好きな割には今まで絵の中にあまり登場させてきませんでした。これからたくさん描き込んでいくつもりです。

TaekoLovesParisさん、
<毎日使うテーブルで、毎日見ていても飽きないですね、きっと>
そう言ってくださるととても嬉しいです。
「天井画を映すテーブル」のアイディアは友人のレストランのために考えたものです。実現はしていませんが。天井画そのものは、日本の天井が低い建物には難しい部分もあるので「テーブル画」を作ってみたのです。テーブルや机や椅子などに描いた個展もやってみたいです。
<茶系だけの円い絵、建物と道でとても落ち着いたふんいきですね>
土性顔料で描き始める場合が多いので、だいたいこんな感じの茶系で始めるのですが、今回は最後まで、こんな色調で行こうと思っています。

SOLEさん、
<旧作の中にラファエッロがいたような>は嬉しいけれど褒めすぎです。
<マンテーニャの作品も見に行ってみたいです。>
マントヴァには天井画の他にもマンテーニャの最高傑作と呼ぶべきフレスコ画があります。ジュリオ・ロマーノの面白い建築とフレスコ画もあるので、とても好きな街です。以前のジャズ・フェスティバルにはマッコイ・タイナーも来てました。

あーろんさん、
<テーブルの天板みたいな物なのでしょうか?>
テーブル画では実際のテーブルに描きましたが、これは輪の枠に張ったキャンバスです。フィレンツェの画材屋さんで手に入ります。問題は額縁ですね。特注になってしまうので。
<星形には気が付きませんでした(ちょっと悔しい ^^)>
星形に気が付かないでくれてありがとう(ちょっと嬉しい)。石畳のパターン、遠近法の矛盾の辻褄を合わせるためにも好都合なのです。
<機会があれば真似してみたいです>光栄です。是非ドードー版見たいです。

yk2さん、
<ワールド・カップとかでちょっとおさぼり気味でしたね>
ウ…、図星。耳が痛い。
<鑑賞者がちん入者ってアイディアもトボけてて面白かったのに>
捨てた訳じゃなくてそっちのアイディアも、独立した絵にしたいと思ってます。
二つの絵を関連させたり(裏表に張り合わせて回転させるとか)、大きな絵に合成するとか、いろいろやってみたいです。

tigerkitaさん、
<構図も先に決めるのですね!>
いつもってわけじゃないです。最近は直感的に描き始めて筆が止まっちゃった時に改めて構図を検討という場合の方が多いかも知れません。

toraneko-toraさん、
<絵って、四角いもの・・なぁんて潜入観念に>
若い頃(1975年!)の作品です↓
http://www005.upp.so-net.ne.jp/Firenze/landscape_s.html
不定形の木枠にキャンバスを張って描いたもの。今になって思うと何でこんな形にしたかったのか自分でも謎です。ただ壁画ということで考えると建築の事情で絵の形も決まるので四角以外の形も必然的に出てきます。

いっぷくさん、
<たっぷり時間があったからといって描けるものじゃないということが計画どおりに淡々とこなせない繊細なことをしているのが伝わります>
ありがとう!「繊細なこと」って言われると気恥ずかしいですが、頑張れば描けるってものでもないんですよyk2さん!でも頭がワールド・カップでは繊細なことでなくても仕事になりませんね、やっぱり(^^;。

フアラライさん、
初めまして。コメントありがとうございました。
完成までもうちょっとかかりそうですがおつき合い頂けると嬉しいです。

ツカさん、
<おもしろい!>
ありがとう!面白いって言われるのとても嬉しいです。絵は先ずエンターテインメントであるべきだって思っています。観る人が頭痛くなるよりも楽しんでもらえた方が嬉しいから。芥川賞的な絵があっても良いけど直木賞的な絵が少な過ぎるというかゴダールやタルコフスキーも良いけどキューブリックやギリアムの方向というか…。

himikaさん、
<真ん中にふわふわの羊がいるのかと思いました>
そのアイディア、頂くかも。
<右斜め上の建物がちょっと顔っぽくみえて>
建物が顔に見える事ありますよね。窓が目でドアが口。実はちょっと意識して描いています。自動車も同じように動物に見える事があります。話がそれますが、車の場合、一般的にヘッドライトを目玉に例えますが、僕は前から自動車の目の位置は、フロントウィンドウの中だと思ってました(フロントグリルが口で、ヘッドライトは鼻の穴)。車が賢そうに見えたり(以前のホンダ車など)、ワルに見えるポイントは「まゆ毛」の引きかた=フロントウィンドウの左右上端のカーブ=というのが持論です(そんな「持論」今まで主張する場が無かったのでここで書いているんですが)。
ディズニーの「カーズ」というアニメでは、ちゃんとその位置に目玉があるので我が意を得たりでした。
http://www.disney.co.jp/movies/cars/

Bijouxさん、
<どんなタイトルが付くのか楽しみです♪>
始め「星の街」でいこうかと思ったのですが<星形には気が付きませんでした(ちょっと悔しい ^^)>あーろんさんもいたことだし「星」って謳わないタイトルでいきたいと思います。

あやっぴぃさん、
<円形の中に何を入れるか考えていると、かなりおもしろい構図が出来上がってくるものなんですね>
そうなんです。円形や正方形って構図が難しいと言う人もいますが、僕は反対にまとまりやすい形だと思います。昔のアルバムジャケットに傑作が多いのもその為じゃないかって思ってます。

panda_pandaさん、
<ステキです♪>
ありがとう!

ゆうゆうききさん、
<楽しい絵ですね(^^)>
ありがとう!観ているといろいろな発見があるという絵が理想です。その方が絵を長く楽しめますから。

サエダさん、
<も絵上手くなりたいなあ・・・。>
サエダさんがblogにのせている絵、とても良いと思いますよ。植物学者や古生物学者で自分の専門分野の絵が凄く上手い人っていますよね。そういう人は学者としても優秀なんだって思います。だからサエダさんの歴史上の人物の絵にも期待しています。

yokuさん、
コメントありがとうございました。
<素人が芸術を語ると>って謙遜されていますがyokuさんはヨーロッパ中世に深い興味と造詣をもってらっしゃるからどんな風に観て頂けるか楽しみにしています。完成までしばらくかかりそうですがお付き合い頂けると嬉しいです。

ミカチさん、
<丸いキャンバスって面白いですね!天井画、とても気に入りました。>
ありがとうございます。天井画、描くのは大好きなのですがなかなかチャンスがないのが残念です。

ぱふさん、
<先日はあまりの重さにnice! 押し逃げしてしまいました>
「nice! 押し逃げ」僕の得意技です。イタリアでは時差もあったし、ADSL自体も遅いのであまり気になりませんでしたが、確かに日本時間の深夜は何か作業しようという気が失せるほど重いことがありますね。
<丸い絵で、しかも星型っていうのは、ものすごい新機軸じゃありませんか?>
「新機軸」とお褒め頂いて嬉しいです。遠近法の消失点を組み合わせて星形にするというアイディアは多分、新発明。特許は取れないでしょうけど。

皆さん大変お褒め頂いて嬉しいです。途中の段階であまり褒められるとその先、大胆に描けないという場合もあるのですが、壁画家の場合、人に見られながらの製作段階も多いのでその点は大丈夫。フィレンツェに戻ったら、ご期待を裏切らないように張り切って先に進みます。


nice!(19)  コメント(13)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 19

コメント 13

今日本に帰国しているんですね。慌しいそう。
体調に気をつけてお仕事を頑張ってください。
円い絵を見ていると、今までにないもので新鮮に写ります。
そうそう、時々猫ちゃんを登場させてください。
by (2006-07-25 08:15) 

あーろん

この絵を見てると、なんとなく大きなツボの中に
広がる街を覗いてるような気になります!
大きな丸いテーブルのような空にこういうツボの街が
いくつもあって、遊園地のコーヒーカップみたいに
回りながら時間が過ぎていく街。
これだと町外れは空に手が届くことになりますね(笑)
太陽を一つとして建物の陰影を見せる手法
とってもniceだと思いました!流石です☆☆☆
by あーろん (2006-07-25 13:56) 

SOLE

円い絵になんだかとても惹かれます♡
日本も暑いですか?
お体に気をつけてくださいね!
by SOLE (2006-07-25 16:48) 

yk2

レカンのHPのトップも洋一さんのお仕事なんですね!。
銀座は高そうだからイヤだけど、以前にtaekoさんのblogで上野のブラッスリーが紹介されていたので、美術館に行った帰りに一度寄りたいなぁ~なんて思ってたんです。今度ほんとに行ってこようっと。
by yk2 (2006-07-25 23:25) 

★由佳★

お久しぶりです!覚えてますでしょうか?

この写真…ぱっと見、、、亀かと思いました(殴
違いましたねぇ~。
なんか、変わったアートですね…(アトリエか…
すごく変わった世界で素敵だと思います^^
建物もなんか不思議~。
by ★由佳★ (2006-07-26 21:04) 

12時の建物の色が好きです。
by (2006-07-27 21:05) 

いっぷく

描きかけの絵を前にしてすいすい筆が進む時は気分もいいですね。
また、描きたいのに筆が進まなく集中力も欠けていく、人間だから
そんな波はありますね。
丸いのに加えて、上も下も見る側が決めていい自由さがありますね。
by いっぷく (2006-07-27 22:11) 

匁

福井洋一さん
お帰りなさい。
と言っている間にもうフィレンツエですかね?
今度展覧会を開かれる時はまた、連絡くださいね!
楽しみにしています。
by (2006-07-29 16:22) 

mikachan

日本はどうですか?私もこの夏の後半は日本です。梅雨が明けたら暑そうですよね。丸い絵、このまま完成と言われても何も違和感ありませんが、完成が楽しみです。
by mikachan (2006-07-30 17:50) 

ツカ

お帰りなさい!
お~!あのようなお仕事もしているんですね~!
スゲーあのレストランに合ってる~!
行ってみたいお店です♪^^
by ツカ (2006-07-31 04:30) 

plot

皆さん、コメントとnice!ありがとうございました。

nekoさん、
やっぱり殺人的に忙しかったです(とくにメイコが)。洋一のほうは病院巡りで体のメンテナンス、とりあえず合格のようでヤレヤレでした。東京は予想外に涼しく助かりました。
今度の絵でもそうですが「自分にしか描けないもの、誰も描かなかった世界を描きたい」というのが、絵を描く一番大きな理由です。でもそれだけでは行き詰まってしまうので感動した絵に出会ったたら「自分ならどう描くか」と考えるようにしています。あまり猫を描かなかったのは、昔ある猫を描いた直後、その猫が行方不明になってしまったことがあったからなのですが、不特定の猫ならそんなジンクスを気にする事もないので、これからたくさん絵の中に登場させるつもりです。

あーろんさん、
「大きなツボの中の街〜遊園地のコーヒーカップみたいに回りながら時間が過ぎていく〜町外れは空に手が届く」ってとても不思議なイメージですね。そんな世界が表現できたら素敵です。この絵の周りにいくつかの小さな円い絵を並べてモーターでいろいろな早さで回転させる作品?最終的にどんな形になるかわかりませんが、次の作品の展開につながりそうです。ありがとう!

SOLEさん、
ミラノも暑そうですね。フィレンツェも強烈な夏の陽射しです。朝晩、窓を開け放して(網戸つけました)昼は窓を閉ざして真っ暗にするイタリア式でなんとかしのいでいます。SOLEさんもお身体、気をつけて!

yk2さん、
実はそのレストラン、最近はちゃんと食事した機会がないのです。ごめんなさい。でも体制も変わって頑張っているようですから、機会があったら是非お立ち寄りください。感想もお願いしますね。

★由佳★さん、
ご無沙汰しています。久しぶりに訪れた★由佳★さんのblogの空の写真、感動しました。亀や象の上に乗った世界という神話のイメージもありますね。そういう絵も面白そうです。

panda_pandaさん、
建物の色、まだ変わっていくと思います。でもそれぞれの建物に色の変化をつけていくのを忘れないようにします(意識していないと一様になってしまいがちなので)。ありがとう!

いっぷくさん、
気が進まなくても無理やりイーゼルの前に立つ必要もありますね。プロなのだから。実際は描きかけの絵を眺めながら、どこからか何かがやってくるのをぼんやり待っている時間も多いのですが。<上も下も見る側が決めていい自由さ>は大事にしたいので、額縁を掛けたまま気分で自由に回転できるような工夫をしてみたいと思っています。

tigerkitaさん、
実はもうフィレンツェに戻ってしまいました。またお会いしたいですね。tigerkitaさんも是非、ご自身の展覧会を企画してくださいね。

ミカチさん、
日本は遅い梅雨開けだったようですが多分、もう猛暑です。体調崩されないようにご自愛くださいね。この絵、2週間近く間を空けてしまったのですが、かえって新鮮な気分で取り組めるような気がします。少し進展したらまたご報告しますのでお付き合いください。

ツカさん、
yk2さんがコメントで触れている上野のブラッスリー
taekoさんの記事はこちらです☟
http://blog.so-net.ne.jp/taekoParis/2006-03-13
カジュアルなレストランのようですので機会がありましたら是非。
by plot (2006-08-02 18:09) 

とても面白い構図の絵ですね。頭の中で整理すると、交差点のまんなんかに立っている気がします。楽しみです。
by (2006-08-19 01:17) 

plot

Ikesanさん、ありがとう!観る人の想像力をちょっとだけ刺激して描かれた世界に参加してもらう…というのがこの絵の意図です。この後空を少し描いてちょっとお休み。テンペラで描き始めたのだけど、この後油彩で描き込むつもり。その油絵具を補充したいので画材屋さんの夏休み明けを待っているところです。待っててもしかたないので別の小品を始めました。もう少し進んだらそちらもupするつもりです。
by plot (2006-08-19 21:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。